2013年7月21日日曜日

ほんとの空

        「あどけない話」        高村光太郎

     智恵子は東京に空が無いといふ、

     ほんとの空が見たいといふ。

     私は驚いて空を見る。

     桜若葉の間に在るのは、

     切つても切れない

     むかしなじみのきれいな空だ。

     どんよりけむる地平のぼかしは

     うすもも色の朝のしめりだ。

     智恵子は遠くを見ながら言ふ。

     阿多多羅山(あたたらやま)の上に

     毎日出てゐる青い空が

     智恵子のほんとの空だといふ。

     あどけない話である。

 『智恵子抄』(昭和3年5月)より

* * * * * * * 

昔、学校の教科書に載っていた詩✎

その頃はピンと来なくてすっかり忘れていました。
11年前に東京に越してきてベランダから空を見上げた途端、
この詩の冒頭が記憶の奥~のほうから蘇ってきました(゜.゜)

ビル群に切り取られた空。。。
「あー、ほんとの空が見たい!」と私の心が叫んだ瞬間だったのかもしれません。

それからというもの、自宅から空を眺める度にこの詩が頭に浮かびます。
悲しいというよりは、素の自分に戻れるような…人間らしい詩。

もし東京に住まなければ、この詩のことなど一生思い出さなかったことでしょう。
…ってことは、この詩が私のことを待っていてくれたのかも?!
高村光太郎&智恵子夫妻が私に何か伝えたかったのかも!?

「ほんとの空」を見る代わり、高村光太郎さんの詩を心に映せるって、もしかしたらもっと素晴らしいことじゃない!? (*^_^*)
そう気付いたら、なんだか急にハッピーな気持ちに…♪ 
(私って単純…^_^;)

人生って、自分の思い望むものが目の前に現れない時もあります。
でもその代わり、私達は何か別の素晴らしいものを自分でも知らず知らずのうちに手にしているハズ☆

だから、「身の回りに起こることに良い・悪いはない。全ては必要だったこと。計画通り!」
・・・と言われるのですね。

もう一度空を見てみました。


空がこんなことを言っている気がしました。
「空は空という大きなキャンバスにいつも自由に絵を描いているんだ。ビルはその絵の額縁だよ」
なるほど、そうだったのか~!!! 
このことに気付くまで11年。。。

人生は簡単には答えを出してくれません(>_<) 
なぜなら考えなくなるから・・・(by 曽野綾子さん)

東京の空も自分の気持ち次第では「ほんとの空」になるようです(#^.^#)

これから夏本番! みなさま、楽しい夏休みをお過ごしください♪

2013年7月9日火曜日

「テルマエ・ロマエ」♨

1年以上、妹から借りっぱなしになっていたマンガ『テルマエ・ロマエ』を読みました。
これが予想以上に面白くて(^o^)


「テルマエ」とはラテン語で「(公衆)浴場」のこと。
なので、「テルマエ・ロマエ」「ローマの浴場」という意味だそうです。

 主人公は古代ローマ時代の浴場設計技師…つまりお風呂職人のルシウス
(古代ローマでは風呂文化が発達し、公衆浴場はさながら日本の銭湯のようでした)

ある日、ルシウスは排水口に吸いこまれ現代日本の銭湯にタイムスリップ! (原作と映画↓)



そこで見た日本の素晴らしい風呂文化を古代ローマに持ち帰り、大活躍します☆
(富士山の絵をヴェスビオス火山に変えて飾ったり、シャンプーハットを作ってみたり、フルーツ牛乳を流行らせたり・・・(^_^))

こうして時空を超え、お風呂を通じてローマと日本を行き来できるようになったルシウス。
ローマでの浴場作りに行き詰ると、「平たい顔族(かおぞく)と呼ぶ日本人からヒントを得るのです。

各章末に著者ヤマザキマリさんのコラム(「ローマ&風呂、わが愛」)もあり、お風呂とはこんなに深いものだったのか~と、好奇心が大いに刺激される作品です(^^♪

ちなみに、映画も笑えます。
ローマ人役を演じた日本の“濃いメン”たち(阿部寛、市村正親、宍戸開、北村一輝…)が西洋人と混じってもまったく違和感なし!(^◇^)     


作者のヤマザキマリさん自身、小さい頃から妹さんと二人だけで銭湯に通っていたそうです。
お父様を早くに亡くされ、お母様も仕事で忙しかったため、銭湯で世話をしてくれたのは番台のお婆さんでした。
昔は買物するにしても必ずお店の人との会話がありました。
人との交流が少なくなった今、 職業も肩書きも関係なく、無防備な状態(真っ裸)でみんな一緒に入る銭湯は究極の「コミュニケーションの場」
日本がどんなに近代化しても、銭湯だけは今も昔のままの異空間なんです。
とヤマザキさんはいいます。(NHK Eテレ「グレーテルのかまど」2013.5.24)

かつて寂しかった姉妹の心をあたためてくれた銭湯とそこに集まる人々
そして、「今も日本人の中にある“古き良き日本の心”を忘れてほしくない」…そんな思いをヤマザキさんはこのマンガに託しました(*^_^*)

これまで世界中を旅し、暮らしてきた経験のあるヤマザキさんだからこそ、日本の良さを外側から見つめて描けた作品なんだなぁと感じました。
                        
番台、美輪さんの心洗われる「美話」が名物の「美輪乃湯」♨
こんな銭湯行ってみたい(^o^)♡
(NHK Eテレ「美輪乃湯」 2012.8.8)
 番組情報→http://www4.nhk.or.jp/miwanoyu/
☆「マンガ大賞2010」、
「第14回手塚治虫文化賞短編賞」授賞
http://natalie.mu/comic/news/29206