2013年11月26日火曜日

ふたつの手

クリスマスまであと一ヶ月ですね

女優オードリー・ヘップバーン(1929-93)にとって人生最後のクリスマスイブ、二人の息子さんたちにあるお気に入りの詩の一部を朗読してあげたそうです。

それがサム・レヴェンソン(教師・作家・俳優)の「ときの試練によって磨かれる美」という詩。 
オードリーの長男ショーンさんの本の中に綴られています。

(写真: NHK Eテレ 「グレーテルのかまど」 2013.5.10)
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「ときの試練によって磨かれる美」
サム・レヴェンソン
魅力的な唇になるために、やさしい言葉を話しなさい。

愛らしい目を持つために、人のよいところを探しなさい。

おなかをすかせた人に食べ物を分けてあげれば、身体はほっそりするよ。

1日1回子どもが指で梳いてくれれば、髪はつややかになる。

決してひとりでは歩いていないことを知っていれば、弾んだ足取りで歩けるはず。

おまえの未来のために伝統を残しておこう。

愛情をこめた人のやさしい慈しみは、けっして失われることがない。

物は壊れたらおしまいだけど、人は転んでも立ち上がり、失敗してもやり直し、生まれ変わり、前を向いて何回でも何回でも何回でもあらたに始めることができる。

どんな人も拒絶してはいけないよ。

助けがほしいとき、必ず誰かが手を差し伸べてくれることを覚えておきなさい。

大きくなればきっと自分にもふたつの手があることを発見するだろう。 
ひとつの手は自分を支えるため。 もうひとつの手は誰かを助けるため。 
おまえの「すばらしき日々」はこれから始まる。

どうかたくさんのすばらしき日々を味わえるように。 
『AUDREY HEPBURN―母、オードリーのこと 』 p.218-9
(ショーン ヘップバーン・フェラー、竹書房、2004)


~TBS 「世界ふしぎ発見! 没後20年 オードリー・ヘップバーン 二つの手」(2013.10.12)より~

2013年11月6日水曜日

「思い通りにいかないから人生は面白い」

“人生は「想定外」が当たり前なのに、なぜ人は「思い通りにいかない」と嘆くのか——” 
今年82歳を迎え、なお精力的に執筆活動を続ける作家の曽野綾子さん。

戦争体験、アフリカへの援助活動など…世界のどん底を見てきたからこそ小さな枠に捉われない。

曽野さんの素晴らしさは、なんといってもこの人並み優れたプラス思考にあるように思います(^◇^)

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どんな時代にも、どんな個人にも、思いがけないことは必ず起こります。
ある程度年をとった人なら、「こんなはずでなかった」ということを、二つや三つは抱えているはずです。
それは、お気の毒だ、というより、人間の運命はみんなそうなんですね。 
…実に、人生は次の瞬間、何が起きるかわかりません。

闇がなければ、光がわからない。人生も、それと同じかもしれません。
幸福というものは、なかなか実態がわからないけれど、不幸がわかると、幸福がわかるでしょう。
だから、不幸というのも、決して悪いものではないんですね。

荒っぽい言い方ですが、幸福を感じる能力は、不幸の中でしか養われない
運命や絶望をしっかりと見据えないと、希望というものの本質も輝きもわからないのだろうと思います。

もちろん、不幸はできるだけ避けたいし、病気や貧困はすべて解決する方向へ努力すべきです。
しかし、人間は幸福からも不幸からも学ぶことができるんですね。 
病気、失恋、受験に失敗すること、勤め先の倒産、親との死別、離婚、親しい人から激しい裏切りにあうこと……などを耐え抜いた人というのは、必ず強く深くなっています。

そして、望ましくなかった経験がむしろ個性となって、その人を静かに輝かせているのです。
人は苦しみの中からしか、ほんとうの自分を発見しない、という気さえします。

「ワンダーフル」という英語は、「すばらしい」とか「すてき」とか訳されていますが、これは「フル・オブ・ワンダー」、つまり「驚きに満ちている」という意味なんですね。

人生がすばらしいのは、予想通りにことが進んだからではなくて、むしろ予想されないことの連続だからこそ、すばらしい 
意図しなかったことではあるけれど、それなりに意味があったのだ、ということを発見できたら、その人は、「人生はすばらしい」と言える成功者なんです。
~『思い通りにいかないから人生は面白い』(三笠書房、2013)~